海の都の物語―ヴェネツィア共和国の一千年〈上〉 (中公文庫)



海の都の物語―ヴェネツィア共和国の一千年〈上〉 (中公文庫)

ジャンル:歴史,日本史,西洋史,世界史
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ヴェネツィアの興亡

ローマ人の物語シリーズの著者である塩野七生氏の作品。

塩野七生氏の作品は、文明の興亡という視点から、あるいは政治体制、統治という視点で書かれているものが多い。本作は千年以上に渡り存続したヴェネツィアの興亡を描いた秀作である。上巻は特に建国から地中海の支配的国家として栄えるまで(13世紀頃まで)を描いている。歴史小説というよりは、史実を編年体で塩野氏の切り口から解説する歴史書という趣である。人物でも組織でも国家でも、右肩上がり成長する局面を見るのは非常に爽快で、本作も気持ちよく読める。
ただ、変化に対応できなければ隆盛の原因は衰亡の原因となるという事実を思うと、何かしら焦燥感や危機感が根っこに感じられるのだが。
中世ヨーロッパ、特にキリスト教圏とイスラム教圏の対立の図式に興味のある人にはお薦めであるし、企業や組織、国家の興亡という視点で読んでも非常に面白い。また、ヴェネツィアをはじめイタリアを旅行しようと考えている人も読んでから行くと旅がより興味深いものになるのではないだろうか。
ローマ人の物語シリーズが終わることを心配な方へ・その3

これまでこのレビュー・タイトルで、「神聖ローマ帝国」と「ビザンツ帝国」の本について書きましたが、ローマ人の物語シリーズが大団円を迎えた後、お薦めする作品の大本命は同じ作者による本作ということになるでしょう。文庫本の上下巻併せて千頁を超す大作。ゲルマン民族に追われ、撃退して独立を保ってから、ナポレオンに滅ぼされるまでの、ヴェネツィア共和国(いかに徹底して君主制を排除したかも丁寧に書かれています。)の悠久の千年の歴史は、必ずや読者を惹きつけてやまないでしょう。ヴェネツィアを中心に、ライヴァル国(例えば同じイタリアならジェノヴァ等の他の海洋国家、イタリア外ではビザンツ帝国やオスマン・トルコ)との抗争、他のイタリア都市国家や法王との集合離散など、イタリア千年の歴史を俯瞰するのに格好の本です。作者には「レパントの海戦」等、本書に取り上げられた1エピソードに焦点を合わせた一連の好著がありますが、まずは本書でマクロ的にヴェネツィアを中心とするイタリアの通史を抑えてから、個々のエピソードの本を読むとよいのではないでしょうか。聖地巡礼パック旅行やヴェネツィアの女たちといった章もあり、本書は当時の人々の生活に目を配ることも忘れていません。これだけ充実した内容でこの分量、一度読み始めるとまさに巻を置くこと能わず、読書の醍醐味を味わうことができるでしょう。
ヴェネツィア大好き

海の都の物語。干潟になぜ町が出来たのか?そこに暮らす人々はどうやって水を確保したか??どう暮らしていたのか??
なにをきっかけに、ヴェネツィアの町が大好きになったのか忘れましたが、この本はそんな私に拍車をかけ、
ますますヴェネツィアの魅力にハマりました。
地中海で隆盛を誇った貿易国家を描いた、警句と示唆に富んだ作品

いまではゴンドラと運河、という観光都市の印象が強いヴェネチアの都市国家としての千有余年に渡る歴史を描いた。
地中海で隆盛を誇った貿易国家の興亡の歴史を、「美術史以外、ヴェネチア史ついて書かれた書物が皆無」の日本に紹介した逸品。大部の作品だが、決して難解ではなく、著者独特の硬質の筆致に慣れると大変おもしろく読める。

後年の「ローマ人の物語」でも顕著だが、著者はこの国家の歴史を描くにあたって、単に歴史上の事象を追うのではなく、その背景となる文化、技術、考え方など周辺事象を含め、余さず描いていく。干潟の上につくられた都市の構造から説き起こし、船の構造や発展、銀行や為替といった商業制度とその発展、政治制度、服飾、女性史などなど。もちろん歴史としても、第四回十字軍、ラテン帝国、ジェノヴァとの制海権争い、オスマントルコ・・・と内容には事欠かない。
ヴェネチアが、キリスト教文化圏にあって、十字軍の狂信からも、宗教改革とその反動の独断からも、魔女狩り、異端裁判といった気狂い沙汰からも自由でいられたのはなぜか?

君主制を選ばず、かといって宗教国家でもなく、それでいて強力で統治能力に優れた政体を維持できたのはなぜか?
「すべての国家は、必ず一度は全盛期を迎える。しかし全盛期を何度も持つ国家は珍しい。・・・それを何度も繰り返すのは、意識的な努力の結果だからである。」
などなど、全巻にわたって示唆に富む。
イタリアの好きな人も歴史が好きな人も

初めて読んだ塩野七生氏の作品で、彼女の作品にハマるきっかけとなった一冊です。 読み進めるほど引き込まれていき、特にこの上巻はどんどん進んじゃいます。ヴェネツィア人のたくましさや賢さは見事なものですね。ジェノバや敵国の盛衰史に「ヴェネツィア共和国」はどういう姿で書かれているのだろう…など興味は広がるばかり。

現在のヴェネツィアを訪れてみたくなります。



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